蔵王の樹氷は、世界に誇る景観のひとつで、山形のシンボルです。そしてアイスモンスター<ICE MONSTER>とよばれ、広く海外にまで知られています。私たちは、この恵まれた自然を守り、育てていかなければなりません。
冬の蔵王の気象
シベリアからの北西の季節風は、日本海の対馬暖流(夏は25℃くらい、冬でも10℃前後)から多くの水蒸気をもらって雪雲をつくります。雪雲は朝日連峰で上昇して多量の雪を降らせます。雪雲は山形盆地を通って、再び蔵王連峰で上昇して雪を降らせます。そのときの雲のなかは、多くの雲粒が0℃以下でも凍らない過冷却水滴になって、雪とまじりあった状態になっています。蔵王の1~2月頃は快晴の日が少なく、風向きは北西から西を示し、平均風速10~15m/s、平均気温―10~―15℃の吹雪の世界です。樹氷はこうした気象条件のなかで成長します。
樹氷のできる条件
蔵王の樹氷は、亜高山帯に生育する針葉樹のアオモリトドマツが雪と氷に覆われてできます。そのしくみは、
1)雪雲の中の雲粒(過冷却水滴)が枝や葉にぶつかって凍りつくとエビのシッポができ、
2)そのすき間に多くの雪片がとり込まれ
3)しかもこれらが固くなっていく。 という一連の現象が繰り返されることで説明されます。
* 1)は着氷、2)は着雪、3)は焼結という現象です。
樹氷ができるまで
11月~12月初期アオモリトドマツは、季節風で運ばれた雲粒(過冷却水滴)による着氷と着雪で覆われはじめる。
1月成長期風上に向かってエビのシッポが発達し、着雪も盛んに起こってくる。
2月最盛期着氷と着雪が最も盛んで、大きな樹氷に成長する。
3月衰退・倒壊期気温の上昇で樹氷はとけて細くなり、また雨などで一気に倒壊する。
言葉の説明
過冷却水滴(かれいきゃく すいてき)
水は普通0℃で氷になるが、雪粒(直径0.01~0.03mm)のような小さな水滴では、最低―30℃でも水滴の状態でいる。しかし、非常に不安定な状態なので、低温の物体にぶつかるととたんに凍りつく。
雪雲(せつうん)
雪のもとになる小さな氷(氷晶)や雪の結晶、多くの小さな水滴(雲粒)からできている。
アオモリトドマツ
日本の中部地方以北の山岳の亜高山針葉樹林の代表種で、樹氷はこの木をもとにしてできる。蔵王の亜高山帯はおよそ標高1300m~1700mで、樹氷原はほぼこの標高帯である。
焼結(しょうけつ) <シンタリング>
とける温度に近くなっている0℃付近の雪は、互いにくっついて固くしまっていく性質がある。これを焼結 <シンタリング>といい、樹氷が成長する重要なしくみの一つである。