此の頃からは本人も愈々觀念の臍を固めたと見え、それに平常チスルクランといぶヤミ族獨特の小舟を大海に浮べて生活して居るだけに、汽車や自動車の動搖位では他の乘客は蒼くなつて居る三十一里の臨海バスも本人だけは始めて仍公の世の中だと言はんばかり、元氣百倍して其の感想も大分纏つて居るやうだ。曰く「汽車で見る兩側は樹木も茂つて居て紅頭嶼よりは氣持が良い、其のうちに汽車は闇い孔の中に這入つて仕舞たのでビツクリして同行のアマカヤウさんの傍に身を寄せ聞いて見たら此れがトンネルといぶもの山の中を鑿つたのだと判つた、若し山が崩れて來たらとうかと心配して居るうちに急に明るくなつてまるだ生き返つたやうな氣かした。
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